言葉の働きとその構造

ひとは、言葉を使って世界を語っているようで、実際には、言葉によって世界のかたちを見ているのかもしれない。

言葉|4視点から見た機能

① 心理学

  • 言葉は内的秩序化のツール
    感情や思考を「名づける」ことで、脳が扱える情報として再構成する。

  • 言葉を失うと、感情は漠然としたノイズのまま漂い、ストレス応答が強まる。

  • 言語化によって“自己との対話”が生まれ、心の修復が始まる。
    → 言葉は「心の縫合糸」。

    ② 言語学

    • 言葉は世界を切り取る構造
      どんな単語を持つかで、認知できる現実の範囲が変わる。

    • 新しい語彙は、新しい世界の見え方を生む。
      → 言葉は「現実を織る織機」。

    ③ 脳科学

    • 言葉の理解と発話は前頭前野と辺縁系の協働によって起きる。
      感情を言語化することで、扁桃体の過剰反応が鎮まり、自己制御が回復する。

    • “言葉にする”行為は、脳の再統合プロセス。
      → 言葉は「神経の断線をつなぎ直す配線」。

    ④ 格言(インドの法・ダルマ)

    「他人の法を立派に生きるより、自分の法を不完全に生きるほうが良い」

    • 他人の言葉で生きるとは、他人の世界構造の中で動くこと。

    • 自分の経験・感情から生まれた言葉を選び取ることが、“自分の法を生きる”行為。
      → 言葉は「自己の道を縫う針」。

     

    統合コンセプト

    • 言葉は、世界と心を縫い合わせる道具。

      感情を秩序づけ(心理学)、世界を編み(言語学)、脳を再統合し(脳科学)、そして自分の法に沿って歩む(格言)。

      借り物ではなく、自分の針で縫い直したとき、
      世界はもう一度、呼吸をはじめる。